不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において、第三者とはいわゆる背信的悪意者を含まないものとする。
1 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約に係る意思表示を詐欺によるものとして適法に取り消した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該取消後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
2 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約を適法に解除した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該契約の解除後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
3 甲不動産につき兄と弟が各自2分の1の共有持分で共同相続した後に、兄が弟に断ることなく単独で所有権を相続取得した旨の登記をした場合、弟は、その共同相続の登記をしなければ、共同相続後に甲不動産を兄から取得して所有権移転登記を経た第三者に自己の持分権を対抗できない。
4 取得時効の完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者は、その旨を登記しなければ、時効完成後に乙不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
正解 3
1 ○ 詐欺による取消をした売主と、取消後の第三者とは対抗関係にたつ。(判例)
2 ○ 解除した売主と、解除後の第三者とは対抗関係にたつ。(判例)
【関連】なお解除前の第三者が保護されるには、権利保護要件としての登記(対抗問題ではない)が必要とされる点に注意。
3 × 弟は、甲不動産を兄から取得して所有権移転登記を経た第三者に、登記なくして自己の持分権を対抗できる。判例であるが、その考え方はこう。弟の持分(1/2)について、兄は無権利者であり無権利者から取得をした第三者も無権利者ということになる。無権利者に対しては、登記なくして所有権を主張できるから、弟は自己の持分について、登記なくして主張できるというわけ。
4 ○ 時効により取得した者と、時効完成後の第三者(譲受人)とは対抗関係に立つ。(判例)
※ ●●後の第三者ときたら対抗関係で処理、●●前の第三者ときたら、それぞれの規定で処理、と憶えておこう。
●●にはいるのは、取消・解除・時効完成の3つ。