複数業者が関与するときの重要事項説明や37条書面
Aが自己の土地の売却を業者Bに媒介依頼した。
一方、土地を探しているDは、業者Cに媒介依頼した。
ちょうど条件が折り合い、契約前に買主であるDに重要事項説明をすることになったとする。
この場合重要事項説明をする(取引士にさせる)義務は、業者Bと業者Cの双方にある。もしAも業者であったなら、Aもまた義務を負う。これは条文上明らか。
とはいえ、買主Dもおなじような説明を二回も三回も聞かされるのは迷惑である。
そこで業者のいずれかが重要事項説明を行えば、他の業者は、いわばそれにのっかるかたちで重要事項説明をしたことになるようになっている。そしてこのときに、重要事項説明書や説明にミスがあれば、行った業者だけでなく、のっかった業者のほうも責任を負うことになるのである。
この責任の所在をはっきりさせるため、のっかる業者には、行う業者の交付する重要事項説明書に、自分のところの取引士の記名押印が必要となる。
37条書面の交付についても同様で、取引に関与した宅建業者すべてが交付義務を負うことになるし、もし1業者が交付して、他の業者がそれにのっかる場合には、のっかる業者の取引士が記名押印をする必要がある。
【余談】 複数業者関与の重要事項説明の仕方は宅建業法上に明文の規定がないため、代表して1業者が行う場合のこのようなルール(国土交通省の指導?)は、関東ではわりと定着しているが、関西ではあまり守られていない、つまり取引士連名の記名押印なしに済ませてしまうことが多いらしく、今後徹底していくように指導を強化しているそうです。
【ヒッカケ注意】
宅建業者Aが自己の保有するアパートの貸借を業者Bに媒介依頼した。
一方、アパートを探しているDは、業者Cに媒介依頼した。
BCの仲介によりAとDの間で建物賃貸借の契約がされることになったとする。
重要事項説明の義務や、37条書面の交付義務があるのは誰か?
答え: BとC (Aにはない)
Aのやっていることは「自ら貸借」であり取引に該当しない、すなわち宅建業にあたらないから。
【参考問題】平成10年 問39
宅地建物取引業者であるA及びBが,共同で宅地の売買の媒介をするため,協力して一の重要事項説明書 (宅地建物取引業法第35条の規定に基づく重要事項を記載した書面) を作成した場合に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。なお,Aの取引主任者をa,Bの取引主任者をbとする。
1 AとBは,a一人を代表として,宅地の買主に対し重要事項説明書を交付して重要事項について説明させることができる。
2 AとBは,重要事項についてaとbに分担して説明させるときでも,aが単独で記名押印した重要事項説明書を交付させれば足りる。
3 a及びbは,重要事項説明書を交付して説明する際に宅地建物取引主任者証を提示するとき,胸に着用する方法で行うことができる。
4 重要事項説明書に記載された事項のうち,Aが調査及び記入を担当した事項の内容に誤りがあったとき,Aとともに,Bも指示処分を受けることがある。
肢2が誤りで正解肢となるのですが、理由はbが記名押印していないからです。なお、肢1は、「AとBは・・・重要事項説明書を交付して・・・」の部分に、aとbのどちらもが記名押印していることが含意されていると読まなければなりません。