抵当権の順位の譲渡と、同放棄
抵当権の順位の譲渡:先順位抵当権者と後順位抵当権者の間で、その順位を譲渡すること。つまり順位がいれかわる。
抵当権の順位の放棄:先順位抵当権者が後順位抵当権者に対して順位放棄することで、その後順位抵当権者に優先権をもたなくなる。つまりその当事者の債権額の割合で分配することになる。
具体例でやってみよう。
1番抵当権者A、2番抵当権者B、3番抵当権者Cがそれぞれ債権額400万円、300万円、200万円であったとする。また競売代金が800万円であった。すると優先弁済を受けられる額(配当額)は、まず下表のようになる。
債権額 | 本来の配当額 | |
---|---|---|
A | 400 | 400 |
B | 300 | 300 |
C | 200 | 100 |
ここで、AからCに抵当権の順位の譲渡が行われたとすると、Aの配当額400万円とCの配当額100万円の合計500万円について、Cが優先弁済を受けるから、Cが債権額200万円の配当、Aは残りの300万円の配当となる。
債権額 | 順位譲渡のあった場合 | |
---|---|---|
A | 400 | 300 |
B | 300 | 300 |
C | 200 | 200 |
次に、AからCに抵当権の順位の放棄が行われたとすると、Aの配当額400万円とCの配当額100万円の合計500万円について、ACに債権額の割合で分配されるから、
債権額 | 順位放棄のあった場合 | |
---|---|---|
A | 400 | 約333 (500×400/600) |
B | 300 | 300 |
C | 200 | 約166 (500×200/600) |
順位の譲渡にせよ順位の放棄にせよ、当事者以外の者(この例ではB)に影響しないところがミソである。