AがBに対して建物の建築工事を代金3,000万円で注文し、Bがこれを完成させた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 請負契約の目的物たる建物に瑕疵がある場合、瑕疵の修補が可能であれば、AはBに対して損害賠償請求を行う前に、瑕疵の修補を請求しなければならない。
2 請負契約の目的物たる建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、Aは当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
3 請負契約の目的物たる建物に瑕疵があり、瑕疵の修補に要する費用が契約代金を超える場合には、Aは原則として請負契約を解除することができる。
4 請負契約の目的物たる建物の瑕疵について、Bが瑕疵担保責任を負わない旨の特約をした場合には、Aは当該建物の瑕疵についてBの責任を一切追及することができなくなる。
正解 2
1 × 注文者Aは請負人Bに対し、瑕疵の修補に代えて、又は瑕疵の修補とともに、損害賠償請求できる。
2 ○ そのとおり、判例。
3 × 瑕疵により契約の目的が達成できない場合でも、建物や土地工作物の場合には契約の解除はできない。
4 × このような特約は有効であるが、知りながら告げなかった事実については免責されないから、「一切追及することができなくなる」わけではない。
【参考】肢2の判例について
まず前提として、肢3でも出題されているが条文上『完成してしまえば、瑕疵により契約の目的が達成できない場合でも、建物や土地工作物の場合には請負契約の解除はできない』ことになっている。これは、もし解除できるとすれば請負人の負担が大きすぎる(作った建物等を取り壊して更地に戻さねばならず、かつ代金はもらえないことになるから)という趣旨で設けられた規定である。
すると、このような趣旨からして「当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償」は請負人にとって解除と同レベルの負担であり、許されないのではないかとも考えられる。
この点が論点として争われたが、結局、裁判所は現実的要請からこれを認めることにしたというのが、この判例である。