留置権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て建物に付加した造作の買取請求をした場合、賃借人は、造作買取代金の支払を受けるまで、当該建物を留置することができる。
2 不動産が二重に売買され、第2の買主が先に所有権移転登記を備えたため、第1の買主が所有権を取得できなくなった場合、第1の買主は、損害賠償を受けるまで当該不動産を留置することができる。
3 建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された後に、賃借人が建物に関して有益費を支出した場合、賃借人は、有益費の償還を受けるまで当該建物を留置することができる。
4 建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合、賃借人は、建物所有者ではない第三者が所有する敷地を留置することはできない。
正解 4
1 × 造作買取請求権の場合、債権は造作に関して生じたものであって、建物に関して生じたものではないから、建物留置は認められない(判例)。
2 × 第1買主が第2買主に引渡しを拒んでも、売主の損害賠償を間接的に強制することにはならない(あたりまえだが、売主にはいたくもかゆくもない)から、物と債権の間に牽連性を認められない。
3 × 留置権の成立要件のひとつに、「占有が不法行為で始まったものでないこと」がある。本肢では、債務不履行解除後にいまや不法占拠者となった賃借人が有益費を支出しているので、留置権は認められない(判例)。
4 ○ 「建物に関して必要費を支出した」のであるから、敷地とは牽連性がなく、留置権は認められない。
留置権の成立要件、特に「物と債権の間の牽連性」に関する難しめの問題。