指名債権の譲渡における債務者の抗弁(異議をとどめない承諾)
第四百六十八条 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
2 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
解説
ちょっとややこしいことにこの条文では、2項が原則で、1項が例外的ケースとなっている。
債権譲渡は、原則として抗弁も承継される(2項)。
たとえば、AがBに100万円を貸していたところ、BはAに対して車を売り、代金100万円を受け取っていない。つまり相殺できる状態になっていた。その後、Aは100万円の貸金債権をCに債権譲渡をし、Bに通知をした。このときBはCから請求を受けても、相殺を主張することができるわけである。
ところが、もしもBが「異議をとどめない承諾」をしてしまったら、Cに対して相殺を主張できなくなる(1項)。譲受人の信頼を保護し債権取引の安全を図るため、このように規定されている。
異議をとどめない承諾というのはピンとこないと思うが、要するにBが、AやCに対して「はい、債権譲渡を承諾します」と言ったらこれになる。一方、「債権譲渡は承諾しますが、Aに対する反対債権で相殺するかもしれませんよ」と言えば、異議をとどめた承諾をしたことになる。
H12問6