〇〇後の第三者ときたら登記の早い者勝ち
〇〇に入るのは、「詐欺(強迫)取消」「解除」「時効完成」です。
〇〇前の第三者ときたら、それぞれの規定で処理。〇〇後の第三者ときたら、どれも対抗問題として処理、と憶えておこう。
1.取消前の第三者と取消後の第三者
A所有の土地をBがだまして(おどして)手に入れて、Cに転売。その後Aは詐欺(強迫)による意思表示の取消をした。
このときCは取消前の第三者であり、詐欺の場合にはCは善意でありさえすれば(無過失はいらない、登記もいらない)勝ち。また、強迫の場合にはAの勝ち(Cの善意悪意問わず)である。
A所有の土地をBがだまして(おどして)手に入れたが、すぐにAは詐欺(強迫)による意思表示の取消をした。しかしBはCに転売してしてしまった。
このときCは取消後前の第三者である。「取消したんだから返せ」というAと、「買ったんだから渡せ」というCは、いわばBを起点とする二重譲渡と類似の関係である。そこでAとCの優劣は、登記の早い者勝ちつまり対抗関係で処理することになる。
2.解除前の第三者と解除後の第三者
D所有の土地をEが買い、Fに転売した。ところがEが代金を支払わなかったため、Dは債務不履行解除をした。
このときFは解除前の第三者である。Fは対抗要件(権利保護要件としての登記※)があれば勝ち。なおFの善意悪意は問わない。
【参照】545条
D所有の土地をEが買ったがEが代金を支払わなかったため、Dは債務不履行解除をした。しかしEはこの土地をFに転売した。
このときFは解除後の第三者である。この場合も、いわばEを起点とする二重譲渡と類似の関係である。そこでDとFの優劣は、登記の早い者勝ちつまり対抗関係で処理することになる。
【参考】※について
DはEから代金を払ってもらえなかったいわば被害者でなんら落ち度があるわけではない。このようなDの犠牲のもと第三者Fが保護されるには、契約をしているだけでは足りず、対抗要件まで備えている必要がある(判例)。
ところで、これでは解除の場合は前でも後でも同じじゃないかと思う人がいるだろう。しかし、ちょっと違いがある。解除前の第三者Fは、解除のときに登記を備えていなければ、それで負け。一方、解除後の第三者Fは登記を備えていなくても、Dに先んじて登記できれば勝てる。
3.時効完成前の譲受人と時効完成後の譲受人
X所有土地をYが時効取得したが、その時効完成前にこの土地はXからZに譲渡された。
時効完成前の譲受人Zは、Yの時効完成時の所有者であり当事者であるから、Yは登記なくしてZに所有権を主張できる。
X所有土地をYが時効取得したが、その時効完成後にこの土地はXからZに譲渡された。
この場合も、いわばXを起点とする二重譲渡と類似の関係である。そこでYとZの優劣は、登記の早い者勝ちつまり対抗関係で処理することになる。