B所有の土地をAがBの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 AとBとが夫婦であり契約に関して何ら取り決めのない場合には、不動産売買はAB夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内にないとCが考えていた場合も、本件売買契約は有効である。
2 Aが無権代理人である場合、CはBに対して相当の期間を定めて、その期間内に追認するか否かを催告することができ、Bが期間内に確答をしない場合には、追認とみなされ本件売買契約は有効となる。
3 Aが無権代理人であっても、Bの死亡によりAがDとともにBを共同相続した場合には、Dが追認を拒絶していても、Aの相続分に相当する部分についての売買契約は、相続開始と同時に有効となる。
4 Aが無権代理人であって、Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合には、Bは追認を拒絶できるが、CがAの無権代理につき善意無過失であれば、CはBに対して損害賠償を請求することができる。
正解 4
1 × いわゆる日常家事代理権を基本代理権とする表見代理の成立は、相手方が、その行為が日常家事の範囲内にあると信じるにつきに正当の理由がある場合に限られる(判例)。取引安全と夫婦別産制のバランスから。
2 × 本人が期間内に追認しない場合は、追認拒絶とみなされる。
3 × 共同相続人全員が共同して追認しない限り、無権代理行為は有効にはならない(判例)。なお単純相続の場合には、無権代理人が本人を相続した場合には、信義則上、無権代理人は本人の地位に基づく追認拒絶権を行使できない(判例)、つまり無権代理行為は有効となるわけであるが、共同相続の場合には他の共同相続人の利益を考える必要があるから。
4 ○ 前段部分、無権代理人を本人が相続した場合には、本人は自己の地位に基づく追認拒絶権を行使できる。(判例)信義則に反しないからである。後段部分、一方本人は相続により無権代理人の責任を負うことになるから、相手方は善意無過失であれば、損害賠償請求することができる。なお、この場合には相手方は履行請求をすることはできないとするのが通説的見解である。履行請求を認めると、本人に追認拒絶権を認めた意味がなくなるからである。