Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため得意先に向っている途中で交通事故を起こし、歩いていたCに危害を加えた場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 BのCに対する損害賠償義務が消滅時効にかかったとしても、AのCに対する損害賠償義務が当然に消滅するものではない。
2 Cが即死であった場合には、Cには事故による精神的な損害が発生する余地がないので、AはCの相続人に対して慰謝料についての損害賠償責任を負わない。
3 Aの使用者責任が認められてCに対して損害を賠償した場合には、AはBに対して求償することができるので、Bに資力があれば、最終的にはAはCに対して賠償した損害額の全額を常にBから回収することができる。
4 Cが幼児である場合には、被害者側に過失があるときでも過失相殺が考慮されないので、AはCに発生した損害の全額を賠償しなければならない。
正解 1
1 ○ そのとおり。Bの不法行為責任とAの使用者責任は不真正連帯債務となり、Bの損害賠償義務が消滅時効にかかったとしても、Aの損害賠償義務は当然には消滅しない。
2 × 即死の場合にも、精神的な苦痛に対する損害賠償請求権が発生すると考えられる。 そして、不法行為による慰謝料請求権は相続の対象となる(なお被害者が生前に請求の意思表示をしなくても)し、これは即死の場合であっても同様である(判例)。
3 × 「常に」が誤り。 信義則上相当と認められる限度に制限されることがある(判例)。 使用者責任が、利益あるところに損失もまた帰する、という考え方に基づくものであるから。
4 × 「Cが幼児である場合には、被害者側に過失があるときでも過失相殺が考慮されない」わけではない。例えば、Cの保護者(被害者『側』)に過失がある場合には、過失相殺が考慮されよう。
全体的にやや難しいが、正解肢になっている肢1は平成11年に出題された知識。