AがBに甲土地を売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 甲土地につき売買代金の支払と登記の移転がなされた後、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、原状回復のため、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となる。
2 Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって無効を主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として無効を主張することはできない。
3 AB間の売買契約が仮装譲渡であり、その後BがCに甲土地を転売した場合、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができない。
4 Aが第三者の詐欺によってBに甲土地を売却し、その後BがDに甲土地を転売した場合、Bが第三者の詐欺の事実を知らなかったとしても、Dが第三者の詐欺の事実を知っていれば、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。
解答 4
1 ○ そのとおり。売買契約が第三者による詐欺を理由に取消された場合、当事者双方の現状回復義務は533条の類推適用により同時履行の関係になる。(判例)
2 ○ そのとおり。錯誤無効は表意者本人を保護する制度であり、したがって原則表意者のみが主張できる。例外はあるが、表意者自身が重過失で錯誤無効を主張できないのであるから、他の者が主張できるわけがないと考えればよい。
3 ○ そのとおり。虚偽表示による無効は、善意の第三者に対抗できない。
4 × 虚偽表示で第三者が善意、転得者が悪意の場合と同様に考えればよい。つまり、もしもAの取消を認めるならば、Cは甲土地を取り返されることになるが、そうするとCはBに対して代金返還を求めることになり、善意のBが大迷惑をすることになる。