民法第145条

民法重要条文と判例 -宅建過去問徹底攻略

時効の援用


第百四十五条 時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

 解説 

時効が完成すれば、自動的に借金がなくなったり、所有権が手に入ったりするわけではない。時効の援用(時効消滅なり時効取得なりの主張)をして、はじめてそうなる。

例えば、Aから15年前に借金していたBが返済を求められ、払わないでいたところAは裁判を起こしたとする。ここでBが何も言わないと裁判官は、「確かにBはAから借金をしている。よって返済を命じる。」と判決を下す。一方、Bが「Aからの借金は15年前なので消滅時効の成立を主張します(時効の援用)。」と言えば、裁判官は、「Aからの借金は時効により消滅した。よって返済しなくてもよい。」と判決するわけ。

時効の援用権者について、時々出題がある。

【判例】 時効の援用権者は、時効により直接に利益を受ける者をいう。
通説では、「時効により直接又は間接に利益を受ける者」なので、これをヒッカケ的に誤りの肢にしてくる可能性がある。

《時効の援用権者にあたる具体例》
・債務者
・(主たる債務の時効が完成したときの)保証人、連帯保証人、物上保証人、抵当不動産の第三取得者(判例)

《時効の援用権者にあたらない具体例》
・先順位抵当権者の被担保債権の消滅について後順位抵当権者(判例)
・土地所有権の取得時効について、その土地上の家屋賃借人(判例)

【判例】 消滅時効完成後に債務承認をしたら、たとえ時効完成を知らずにしたとしても、もはや信義則上※、時効の援用はできなくなる。
時効完成を知らないでうっかり、「そのうち払う」とか「次のボーナスまでまって」とか言っちゃたり、「いま持ち合わせがないのでとりあえずこれだけ払う(一部弁済)」なんてしちゃったら、もう時効援用はできませんということ。
もちろん、その後あらたに時効が完成すれば話は別。承認後、再度時効が完成すればそれは援用できる。

※ 債権者からすると、時効が完成しているのに、債務者が「払います」とか「待ってくれ」とか言う(債務承認する)ということは、債務者には時効の援用をする気はないのだなという期待を持つことになるから、その期待を裏切ることは信義則に違反することになるわけ。

【判例】 時効の援用の効果は相対的である。他の援用権者には影響しない。


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