Aは、A所有の甲土地にBから借り入れた3,000万円の担保として抵当権を設定した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 Aが甲土地に抵当権を設定した当時、甲土地上にA所有の建物があり、当該建物をAがCに売却した後、Bの抵当権が実行されてDが甲土地を競落した場合、DはCに対して、甲土地の明渡しを求めることはできない。
2 甲土地上の建物が火災によって焼失してしまったが、当該建物に火災保険が付されていた場合、Bは、甲土地の抵当権に基づき、この火災保険契約に基づく損害保険金を請求することができる。
3 AがEから500万円を借り入れ、これを担保するために甲土地にEを抵当権者とする第2順位の抵当権を設定した場合、BとEが抵当権の順位を変更することに合意すれば、Aの同意がなくても、甲土地の抵当権の順位を変更することができる。
4 Bの抵当権設定後、Aが第三者であるFに甲土地を売却した場合、FはBに対して、民法第383条所定の書面を送付して抵当権の消滅を請求することができる。
正解 2
1 〇 抵当権設定時に、土地上に建物が存在し、ともにAの所有であるから法定地上権が成立する。その後、建物がAからCに売却されてもかわりはない。
【参照】 法定地上権の成立要件
2 × 土地と建物は別個の不動産であるから、土地抵当権の効力は建物には及ばない。
3 ○ そのとおり、374条。この肢はやや細かい知識をきいているが、知らなくてもちょっと考えてみれば、抵当権設定者であるAには順位が変更されてもなにも影響しないことは推測できると思う。
4 〇 Fは第三取得者であるから抵当権消滅請求できる。「書面を…」という部分は細かいが付け足し。
【参照】 379条、383条
【参考】
374条 抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
「利害関係を有する者」というのは転抵当権者や被担保債権の差押権者など、抵当権設定者はこれに該らない。