弁済の提供の効果・方法
(弁済の提供の効果)
第四百九十二条 債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる。
(弁済の提供の方法)
第四百九十三条 弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
解説
弁済に債権者の協力が必要な場合(受領とか登記の共同申請とか)に、それが得られないと債務者は債務不履行責任を負う危険性があることになるから、民法は、ちゃんと弁済の提供をすれば(とりあえず)債務不履行責任を負わないと規定している。
弁済の提供とは、債務者が給付の準備をして債権者の協力を求めること。
【判例】弁済の提供によって(つまり、弁済の提供だけでは)債務は消滅しないから、担保物の返還請求はできない。
原則 | 現実の提供 | |
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例外1 | 口頭の提供で足る | あらかじめ受領を拒んでいるとき※1 |
例外2 | 口頭の提供も不要 | 弁済を受領しない意思が明確な場合※2 |
※1 たとえば、一方的に値上げを主張して、その額でないと受け取らないと言っているケース。
※2 たとえば、契約の存在自体を否定しているようなケース。
【判例】郵便為替や銀行振出の小切手は有効な提供になるが、郵便切手や個人振出の小切手は有効な提供にならない。
現実の提供といえるためには、債権者が受領すればいいだけという程度に提供する必要がある。
口頭の提供とは、現実の提供をなす準備を完了して、受領を催告すること。