賃借人による費用の償還請求
第六百八条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
解説
「第百九十六条第二項の規定に従い」とか、しょうしょうめんどくさいので、まとめると、
必要費 | 有益費 | |
---|---|---|
意味 | 使用収益に必要な費用 ・現状維持や回復の費用 ・保存のための費用 | 賃借物の価値を増加させる費用 |
例 | 雨漏りの修繕費 | 外壁塗装費用 |
時期 | 直ちに | 賃貸借終了時 |
額 | 全額 | 賃貸借終了時に価値が現存する限りにおいて ・価値増加分 ・支出額 のいずれかを賃貸人が選択 |
なお、賃借人の費用償還請求は、目的物の返還のときから1年以内にする必要がある。(600,621)
留置権とのからみで出題されることがあるので、第295条 留置権を確認しておくこと。
【参考】宅建試験では、有益費なら有益費、造作なら造作と明示してくれるはずなので気にしなくてよい話ではあるが、有益費と造作(借地借家法の造作買取請求権)の違いは、分離できるかどうか、あるいは分離したときに単独で価値があるかどうかで考えればよい。下級判例では、雨戸について有益費とした判例と、造作とした判例がある。