民法第509条~第511条

民法重要条文と判例 -宅建過去問徹底攻略

相殺できない場合(3つ)


(不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百九条 債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。


(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百十条 債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。


(支払の差止めを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百十一条 支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。

 解説 

509条は、不法行為債権を受働債権とする相殺を禁止している。たとえば、AがBにお金を貸していたところ、AがBを交通事故で車ではねてしまった。このときAはBに対して、貸金と損害賠償とをチャラにすることはできないわけである。

【判例】逆に、不法行為債権を自働債権とする相殺は認められる。

要するに、『加害者からは相殺できないが、被害者からは相殺できる』と憶えておけばよい。


差押禁止債権の例としては、扶養料債権・恩給債権など。なお、差押禁止債権を自働債権として相殺することはできる。


511条は、せっかく差押えた財産が漏出しないように、差押債権者を保護する規定である。

「その後に取得した債権による相殺」が対抗できないのであって、差押前に取得した債権による相殺は対抗できることに注意。

わかりにくいところなので例をあげる。
A銀行(第三債務者)に、Bが100万円の預金をしていた。一方、CはBに車を売ったが代金を支払ってくれないので、Bの銀行預金を差押えた。(Cは差押債権者)

ところでA銀行も、Bに50万円の貸付をしていた場合、A銀行はCに100万円渡すのか、それとも相殺を主張して50万円渡せばたりるのか、ということである。

ここで、A銀行のBに対する貸付が、CがしたBの預金債権の差押より先であれば、相殺の主張ができる(Cに50万円でよい)。一方、差押より後であれば、相殺の主張はできないから、100万円渡さなければならないわけである。


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H18問11

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