請負契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 請負契約が請負人の責めに帰すべき事由によって中途で終了し、請負人が施工済みの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができる場合、注文者が請負人に請求できるのは、注文者が残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる。
2 請負契約が注文者の責めに帰すべき事由によって中途で終了した場合、請負人は、残債務を免れるとともに、注文者に請負代金全額を請求できるが、自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければならない。。
3 請負契約の目的物に瑕疵がある場合、注文者は、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。
4 請負人が瑕疵担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。
正解 3
1 〇 そのとおり。判例、下記。
2 ○ たとえば、家を建てる請負契約で、注文者のせいで中途で終了した場合、請負人は残債務すなわち残りの工事をしなくてよくなる一方で、請負代金は全額請求できる。ところで請負人には残りの工事に必要な材料代などを払わなくてよくなる分が利益となるが、その分は注文者に返してやる必要がある、と判例はいうのである。536条2項
3 × 注文者の損害賠償請求権と請負人の報酬請求権とは、同時履行の関係になる。634条2項
4 〇 そのとおり。640条
【参考】
たとえば、家を建てる請負契約(1000万円)で、8割がた完成したところで請負人のせいで途中で終了してしまい、注文者は出来高に応じて800万円を報酬として支払った。注文者は残りの2割の工事を完成させるために他の業者に発注したが、300万円かかってしまった。このとき注文者は請負人に対して損害賠償請求ができるが、その額は「残工事の施工に要した費用」300万円なのか、「残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額」つまり追加で必要となった100万円なのかという問題。判例は後者であるとしている。
肢1と2は憶えていなくてもよい。たぶん法的思考力(公平性の観点から考えてみる)を問おうとした出題。けっこう難しい。