17.自ら売主制限
その名のとおり、宅建業者が売主となるときだけの8つの特別ルールである。
素人のお客さん保護が趣旨であるため、業者間取引には適用がない。
また、これに反する特約は無効となり、制限を越える金額等の場合は(その行為が宅建業法違反になるのは別の話として)超える部分が無効になる。
自己の所有に属しない物件の売買契約締結の制限 | ||
203 | 宅建業者は、他人の所有に属する宅地又は建物につき、自ら売主として、売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。 ただし、当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み、契約の効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているとき等は、例外として売買契約を締結できる。 ※要するに素人の買主さんと契約を結ぶ前に、物件を取得する契約(ここでは先行取得契約ということにする)のちゃんとしたものがあるときはOKということ。 ※先行取得契約は、売買契約・売買予約ならよいが、停止条件付はダメ(不確実だから)。 ※ちゃんとした先行取得契約があれば、素人の買主さんとの契約は、停止条件付でもかまわない。(ヒッカケ注意) ※ちゃんとした先行取得契約があれば、代金の支払、移転登記、引渡しがなされていなくても、また、予約完結権を行使する前であってもかまわない。 |
H17問35 H19問41 H21問31 H22問40 H26問31 H27問34 H28問41 |
204 | 宅建業者は、未完成物件につき、講ずべき手付金等の保全措置を講じなければ、自ら売主として、売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。 ※他人物の場合と、未完成物件の場合とはぜんぜんべつものなので、たとえば、他人物の場合に保全措置が講じてあれば契約できるといったヒッカケにも注意。 | H21問31 |
205 | 自己の所有に属しない物件の売買契約締結の制限は、業者間の売買契約には適用されない |
H15問35 H18問38 |
クーリング・オフ | ||
206 | 宅建業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、事務所等以外の場所で、買受けの申込みをした者又は売買契約の締結をした買主は、申込みを撤回し又は契約を解除することができる。 | |
207 | クーリング・オフできない「事務所等」とは、 1.当該宅建業者の事務所・専任設置義務ある案内所 2.宅地又は建物の売買の代理・媒介の依頼を受けた他の業者の事務所・専任設置義務ある案内所 3.買主が申し出た場合の、買主の自宅・勤務先 ※案内所は、土地に定着しているものに限る(テント張りは、できる場所)。 ※代理・媒介の依頼を受けていない他業者の事務所は、できる場所。 ※業者から申し出た場合は、買主の自宅や勤務先であっても、できる場所。 |
H15問39 H16問42 H17問41 H20問39 H22問38 H23問35 H24問37 H25問34 H26問38 H29問31 |
208 | クーリング・オフできる場所かできない場所かは、最初の場所で判断。 つまり、申込み→契約なら申込みの場所で、いきなり契約なら契約の場所で。 |
H17問41 H22問38 H26問38 |
209 | クーリング・オフできなくなる場合 1.申込者又は買主が、申込みの撒回又は契約の解除を行うことができる旨及びその方法を書面で告げられた日から起算して8日を経過したとき 2.申込者又は買主が、宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、代金の全額の支払をしたとき ※業者には、書面で告げる義務やその期間制限はない。8日間タイマーがスタートせず、いつまでもクーリング・オフができる状態のままになるだけだから。 ※「書面で告げられた日から起算して8日」というのは、告げられた日の曜日の、翌週の同じ曜日が終わるまでと考えればわかりやすい。 ※「引渡し」を移転登記などとするヒッカケに注意。 |
H15問39 H16問42 H17問41 H19問41 H20問39 H21問37 H22問38 H24問37 H25問34 H26問38 H27問34 H28問44 |
210 | 申込みの撤回等は、書面で行わなければならず、書面を発した時にその効力が生ずる。 ※民法の原則は到達主義であるが、ここでは買主保護のため発信主義がとられている。 |
H16問42 H20問39 H21問34 H22問38 H27問39 H28問44 H29問31 |
211 | クーリング・オフされたら、業者は申込者等に対し、受領した手付金その他の金銭を速やかに返還しなければならない。 ※契約費用等を、手付金等から控除(相殺)することは許されない。 |
H23問35 H25問34 |
212 | クーリング・オフにより、損害を被っても、業者は損害賠償や違約金の請求はできない。 ※要するに、買主側はノーペナルティで撤回や解除ができる。 |
H15問39 H20問40 H23問35 H28問44 |
213 | クーリング・オフについて、買受けの申込者又は買主に不利な特約は、無効である。 ※不利な特約としては、クーリング・オフできないとする特約や、期間(8日)を短くする特約、到達主義とする特約など。 ※逆に有利な特約は有効である。たとえば、告げられた日から起算して10日以内とする特約。 |
H16問42 H24問37 H26問38 |
損害賠償額の予定等の制限 | ||
214 | 宅建業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務不履行による契約の解除に伴う損害賠償額の予定をし、又は違約金を定めるときは、その合算額は、代金額の2/10を超えてはならない。 ※特約で損害賠償額の予定等をするときの話である。このような特約をしていない場合には、損害賠償額は立証できた額であり2/10などの制限はないから混乱しないこと。 |
H15問38 H15問41 H17問43 H18問39 H20問40 H21問37 H22問39 H22問40 H23問37 H25問38 H28問28 H29問31 |
215 | 上記214に反する特約は、代金額の2/10を超える部分について無効となる。 |
H16問37 H17問43 H19問41 H24問38 H27問36 |
216 | 損害賠償額の予定等の制限は、業者間の売買契約には適用されない。 |
H16問40 H17問43 H23問39 H24問38 |
手付の額の制限等 | ||
217 | 宅建業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金額の2/10を超える額の手付を受領してはならない。 ※超えて受領すると、超えた部分は無効。買主は2/10だけ放棄すれば手付解除ができる。 |
H20問41 H21問39 H21問40 H27問36 |
218 | 宅建業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際し、買主から受領する手付は、すべて解約手付としての性質を有する。 |
H18問40 H19問34 H19問43 H22問39 H23問37 |
219 | 上記218に反する特約で、買主に不利なものは無効である。 |
H15問41 H18問39 H20問40 H21問37 H22問40 H25問38 H26問31 |
220 | 手付の額の制限等は、業者間の売買契約には適用されない。 |
H16問40 H18問38 H20問41 |
瑕疵担保責任の特約の制限 | ||
221 | 宅建業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、売主の瑕疵担保責任に関し、民法の規定よりも買主に不利な特約をしてはならない。 ただし、瑕疵担保責任を負う期間について、目的物の引渡しの日から2年以上となる特約は有効である。 ※「引渡しの日」を売買契約の日とか移転登記の日とかにするヒッカケに注意。 |
H17問42 H21問40 H22問40 H23問37 H24問39 H26問31 H27問39 H29問27 |
222 | 上記221に反する特約は、無効である。 ※たとえば、「瑕疵担保責任を負わない」「主要構造部に限る」「損害賠償請求はできるが解除はできない」といった特約。 ※「引渡しから1年間」とか「契約の日から2年間」などのように2年以上にならない特約の場合には無効となり、民法の原則である、知ったときから1年になる。(頻出) |
H15問41 H17問42 H19問41 H20問40 H21問38 H24問39 H25問38 H27問34 H29問27 |
223 | 瑕疵担保責任の特約の制限は、業者間の売買契約には適用されない。 |
H18問38 H18問41 H23問39 H24問39 |
手付金等の保全措置 | ||
224 | 宅建業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、保全措置を講じた後でなければ、手付金等を受領してはならない。 ※「手付金等」とは、手付、中間金等名義を問わず代金の全部又は一部に充当される金銭で、売買契約の締結以後、目的物の引渡し前までに支払われるものをいう。 ※移転登記後は、保全の必要はないし、それまでしていた保全措置も解除できる。買主にとって、二重譲渡されるおそれがなくなるから。 |
H15問41 H20問41 H21問39 H22問41 H24問34 H25問40 H28問43 |
225 | 保全措置を講じなくても、手付金等を受領できる場合 1.買主が所有権移転登記、又は所有権の保存登記を備えた場合 2.受領しようとする手付金等の額(すでに受領した額も加える)が、 未完成物件の場合は、代金額の5%以下かつ1,000万円以下、完成物件の場合は、代金額の10%以下かつ1,000万円以下 ※要するに、未完成物件であれば、代金額の5%と1,000万円のどちらか小さい額、その額を超えて受領するとき保全措置が要る。 ※「みかん5個、カンジュース」で憶える。 ※受領しようとする額だけではなく、すでに受領した額も含めて保全措置の要否を判断するし、保全措置をとる場合にはその全額についてとる必要がある。 ※未完成か完成物件かは、契約時点で決まる。途中で完成しても変化しない。 |
H15問38 H16問44 H17問42 H19問43 H20問41 H22問41 H23問37 H23問38 H24問38 H26問33 H27問40 H28問43 |
226 | 保全措置の方法 1.銀行、信用金庫等の保証委託契約 2.保険事業者の保証保険契約 3.指定保管機関による保管(寄託契約)、ただしこれは完成物件のみ ※保証や保険の書面を買主に交付する必要がある。 |
H19問34 H22問41 H23問38 H25問40 H27問40 |
227 | 宅建業者が、必要な保全措置を講じない場合は、買主は手付金等の支払を拒むことができる。 ※「支払を拒むことができる」とは、支払わなくても債務不履行にならないという意味。したがって業者のほうで解除や損害賠償請求はできない。 |
H22問41 H28問43 |
228 | 手付金等の保全措置の規定は、業者間の売買契約には適用しない。 |
H16問40 H20問41 H25問40 H26問33 |
割賦販売契約の解除等の制限 | ||
229 | 宅建業者は、自ら売主となる宅地又は建物の割賦販売契約において、賦払金の支払義務が履行されない場合には、30日以上の相当の期間を定めて書面で支払を催告しなければ、契約の解除又は期限未到来分の支払請求はできない。 ※民法の履行遅滞の場合の解除に比べて、「30日以上の相当期間」や「書面による催告」を要求している。 ※これに反する特約は無効 ※業者間取引に適用なし | H23問39 |
所有権留保等の禁止 | ||
230 | 宅建業者は、自ら売主となる宅地又は建物の割賦販売契約においては、当該宅地又は建物を買主に引き渡すまでに、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。 ※これが原則。 ※脱法行為を防ぐために、譲渡担保も禁止される。 ※業者間取引に適用なし | |
231 | 所有権留保ができる場合(例外) 1.支払合計額が、代金額の3/10を超えないとき 2.買主が、(3/10を超えていても)残代金債務を担保するために、抵当権や不動産売買の先取特権の登記を申請し、又は保証人を立てる見込みがないとき |
H15問35 H21問37 H23問39 |